「恵方巻」は「伝統」か? バレンタインからサンタ、鰻、トースターにうつ病の薬まで……企業の販促活動に囲まれる私たち

もうすぐ節分。今年も「恵方巻」が人気です。私は太巻き寿司が大好きですが、恵方巻は買いません。そのわけは……。

目次

恵方巻は伝統か? エロネタか?

私が子供の頃は「恵方巻」という食べ物もそれを食べる作法も聞いたことがありませんでした。

関西出身の方の中には「節分に丸かぶり寿司を食べた」という方もいらっしゃるので、関西の習慣のようですね。

「恵方巻」を楽しむときに知っておきたいことは、「恵方巻はセクハラ」という意見もあることです。

というのは、「丸かぶり寿司」は、大阪船場の豪商が遊女に、男性器に見立てた太巻きずしを切らずに丸かじりさせて、その様子を見て楽しんだ……というルーツも知られているからです。

そう思うと、なぜ切ってはダメなのか、なぜ黙って食べるのか、なぜ目を閉じるのかなど、恵方巻の謎作法も腑に落ちるものがあります……。

なお、「恵方巻がエロルーツであるというのはデマ」という説もありました。

私が確認した限りですが、そう唱える方の根拠は、Twitterでそう書いた人が後から「これはデマ」と書いたからだそうです。

しかし、「遊女まるかぶり寿司」説は、当該ツイートよりずっと前の文献にも見られます。

「丸かぶり寿司発祥の地」という大阪市此花区のHPには、古い資料に「江戸から明治に大阪船場の豪商が遊女に寿司をかぶらせた」などの記述があったことが記載されていました。

とはいえ、「それを楽しんでいる人がなんとも思っていないものをエロネタとしてニタニタ笑う」というのは、現代でも例えば「パイスラ」のように下品な人たちの間では、いつの時代もにもあるですよね。

そう考えると、丸かぶり寿司は関西のある地域では福を祈る習慣とされていたが、花街で「あれってエロいよなあ」と女性にやらせて旦那衆が楽しんだのかもしれません。

こちらのBuzzFeed Newsの記事では、節分の巻き寿司(恵方巻)の研究者で熊本大准教授の岩崎竹彦さんに取材されています。ここでも丸かぶり寿司を「怪しげな風習」と評されています。

海苔の販促キャンペーンとして表舞台へ

そんな関西の一部の地域と花街などで楽しまれた丸かぶり寿司が表舞台に現れたのは、戦後コツコツと海苔の販促活動のために寿司屋などに丸かぶり寿司を推していた大阪海苔問屋協同組合などが、1974(昭和49)年あたりから海苔の販促イベントを始めたことでした。

私が「遊女の遊び説」よりいかがなものかと感じたのは、このイベントが「女子大生による」丸かぶり寿司早食い競争だったことですね。

「花街のエッチな遊びとしても楽しまれていた」と知られている丸かぶり寿司を、わざわざ女子大生限定でくわえさせるって、なかなかキツイものがあります。

今なら叩かれるんじゃないかしら…と思っていたら! え、最近もあるんですね??

この女子大生イベントに関しては、時代の変化もありますし、やめるか、女子大生に限らず誰でも参加できるスタイルに変えた方がいいんとは感じます。
※ネットをチェックしたら「2024年 道頓堀イベントは中止」とのことでした。また「見物人はおじさんばかり」「中年男性が動画を撮影している」などネガティブな評判もみかけました。私も母親として、娘にはやらせたくないですね……。

セブンイレブンが「恵方巻」全国的なイベントへ

女子大生に太巻きをくわえさせても鳴かず飛ばずだった(失礼)丸かぶり寿司が、全国的に知られるようになったのは、セブンイレブンの販促キャンペーンです。

1989年に広島の店舗が節分に恵方巻を販売(その少し前にファミマが販売したそう)。

その後、関西で成功したことで手ごたえを感じて、1998年には全国で恵方巻キャンペーンを展開しました。

なお「恵方巻」という名前の名付け親はセブンイレブンです。

確かに、節分に煎り豆を売るよりは、太巻き寿司のほうが単価は高く、近年はどんどん豪華になり料理人や料理店とのコラボなど話題も作りやすい。さらに予約販売もできるなど、商売としてうまいことに間違いはありません。

くわえるのを嫌がる人もいる

というわけで、海苔販売業者さんとコンビニの努力の甲斐あってすっかり定着した「恵方巻」。

しかし、中には「花街のエロ遊びがルーツ」「食べ方が下品」「伝統でも何でもない」という認識で、丸かぶりすることを嫌がる人がいることも知っておきたいところです。「恵方巻ハラスメント」には要注意です。

私も自分では「恵方巻の丸かぶり」には参加しませんし、女子大生にくわえさせるのも個人的にはNGです。

あれもこれも販促キャンペーン

ほかにも、私たちの生活に当たり前にある習慣にも、伝統というより販促というルーツのものはいろいろあります。

バレンタインとホワイトデー

「バレンタインに愛する人にチョコレートを贈る」は、モロゾフの1932年キャンペーンです。

その後、明治製菓や森永製菓などが続き、すっかり定着。

さらに「義理チョコ」から「友チョコ」と広がりを見せ、消費量はさらに拡大。バレンタインシーズンでチョコレートは年間の1/4が売れると言われています。

一方のホワイトデーは、全国飴菓子工業共同組合が1980年にイベント化したことで広まりました。

サンタの服が赤いわけ

サンタクロースと言えば、白いひげに赤い衣装が定番です。

でも、なんであんなに派手な格好で、夜に煙突から入るのだろう……と考えたことはありませんか。

その理由は、コカ・コーラの販促キャンペーンです。

それまでは、サンタの服は緑色が一般的でした。

土用の丑の日は平賀源内

土用の丑の日といえば、そう鰻ですよね。

もともとは、土用の丑の日に食べるといいのは「う」のつくもの、と言われていたそう。

「梅干し」でも「卯の花」でも「牛」でも、よかったわけですね。

そこに、夏に売れ行きが悪くなるこってり食材・鰻屋さんから相談されて、「土用の丑の日には鰻を食べると精がつく」と発信するようアドバイスしたのが、平賀源内と言われています。

確かに鰻はビタミン類や亜鉛などミネラルも含む栄養豊富な食材。

食べたらきっと「確かに、これはいい!」となって、今日まで定着することになったんでしょうね!

朝ごはんの習慣はトースターを売るため

エジソンが発明ししたトースター。

これを売るために始まったのが、「朝の活力のため朝食をとろう」というキャンペーンです。

それまでは普通だった1日2食が3食になり、今日では朝ごはんを食べる習慣は、すっかり定着しています。

「うつ病は心の風邪」というキャッチコピー

「うつ病は心の風邪」という言葉に聞き覚えがある方は多いのではないでしょうか。

この文言は、2000年ごろにSSRIという新しい抗うつ薬が販売されるにあたり使われたキャッチコピーです。

この販促CMにより「通うのが恥ずかし場所」というイメージがあった精神科に通いやすくなり、うつ病の人への偏見の改善や自殺防止につながりました。

ただ、うつ病は風邪のように1週間程度で完治するような簡単な病気ではないため、誤解を招く表現でもあると個人的には考えます。

このキャンペーンにより精神科に通う人が増え、軽症のひとにも薬が処方されることになり、うつ病患者が増加したという批判もあります。

「イベント」はイベントとして楽しもう

ということで、私たちの周りには、販促キャンペーンがいっぱいです。

仮装大会状態のハロウィンが定着することでコスプレ市場が拡大し、クリスマスは各種プレゼントグッズ販売店やレストラン、ホテルなどの稼ぎ時です。

それが悪いわけではありません。イベントとして楽しみ、思い出が増えるなら素敵なことですよね。

ただ、販促イベントやキャペーンに乗っかって楽しむことに興味のない人や、販促キャンペーンをよしとしない人に対して、「これが伝統」「当たり前なのに」と押し付けてしまわないよう配慮したいところです。

「恵方巻」のように、セクハラにつながりそうなものは、特に注意が必要です。

また、起業家や経営者、営業職などの方は、イベントや習慣として定着するほどの販促の仕掛け方を知り、その手法を大いに参考にしたいところですね。

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