毎日違う服を着るよりも本当に似合う服を着ることが大事。『服を買うなら、捨てなさい』(地曳いく子・宝島社 ・2015)

今年の正月に考えた目標のひとつに、大目標「住衣を整えて思考と機嫌を整える」の1項目として「仕事着と外出着に自分のスタイルを確立」をもうけました。スタイルをもつ心構えを理解しようと『服を買うなら、捨てなさい』を読みました。

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目次

キャリア30年超のスタイリストが考えるオシャレの結論

著者の地曳いく子さんは、女性ファッション誌や女優などのスタイリングを行なう、キャリア30年超のスタイリスト。

女性誌でよくある「1か月着回しコーデ」などを得意とするそうです。

その地曳さんの著書である本書の主旨は

流行なんて関係ない。

自分をよく見せたもの勝ち。

そのためには己を知り、今の姿や生活スタイルを考え、雑誌や流行に惑わされることなく、自分に有利な情報やスタイルだけを上手く取り入れる。

流行やトレンドとは別に「自分が本当に好きなスタイル」を見つけていくことです。

そのためにはイマイチな服は処分して少数精鋭主義でいきましょう

とのこと。

さらに

人生、お金も時間も限られています。(中略)好きなコーディネートなら週2回は繰り返し着てしまっていいのです。そのほうがいちばん大好きな格好でいられる日が増えるし、いちばん素敵な自分でいられる日も増えるでしょう?(中略)あなたを美しく見せる服”だけ”を適量持っているのが理想です。

といいます。

日本女性にかけられた呪い

とはいえ、「いつも同じ服を着ていると思われそう」って気になりませんか? 特に今はSNSやブログなどで、普段着ている服も写真に残るのでなおさらです。

こうした恐れに対して、地曳さんは

「日本では女性だけが『毎日違う格好をしなければいけない』という呪いにかけられいる」

と指摘します。

確かに、男性ならスーツは平日毎日着る人でも1シーズン3枚ほどと勧められ(参考:東洋経済オンライン「スーツは『何着持っている』のが適量なのか」)、週2回は同じスーツということになります。

一方、女性が同じワンピースを週2回着るよう勧める記事はまず見かけません。それどころか、1か月すべてを違うコーディネートで通勤する特集は人気です。

こうした記事のコーディネートを担当する地曳さんは、雑誌の提案は幻想でおとぎ話であり、現実の人間はプロのスタイリストですら真似できないといいます。

また、この「毎日違う格好をしなくてはならない」という呪縛が、「ダサい人」になる元凶だといいます。

ここで、おしゃれな女性の代名詞とも言えるアナ・ウィンターを例として紹介。彼女がコレクション会場に現れるときの靴は、ワンシーズン2~3足程度とのこと。本当に似合う美しいものを選びぬいているから完璧にカッコいいのだと解説しています。

また、ファッション業界のスタイリストたちも、おしゃれの評判が高いひとは服を減らす傾向が見られ、「また同じ服だと思われる」のプレッシャーからすでに解き放たれているそうです。

本当に「おしゃれ」になるための心がけを指南

おしゃれになるためには、まずは似合わなくなった服を捨てることが大事だということ。

  1. いらないものは捨てる
  2. どうでもいいものを買わない

まずはこの2つが基本です。

では、いらないもの、どうでもいいものの判断はどうすればいいのでしょうか。

ここでは、「罠」にたとえて紹介されています。そのうちいくつかを紹介します。

無駄なものを買わせるためにしかけられた「おしゃれの罠」

「なんでも着こなせること=おしゃれ」

これも日本女性にかけられた呪いであると指摘。スカートが似合わないなら、無理してスカートを履くことはない。似合うパンツを履けばいいとのこと。

Vネックが似合うなら、引き出しが全部VネックOK。

これもよく考えたら、そりゃそうだ、ですね。

なお、プロのモデルが何でも着こなせるのは、写真の補正やカメラマン、スタイリスト、メイクさんなどプロのワザがあるからだそうです(笑)。

「おしゃれなものをもっている=おしゃれ」

前者は「おしゃれ」ではなく「おしゃれにお金を使うのが好きな人」だそうです。アイテムでプラスポイントを稼ぐ前に、減点を防ぐことを提案しています。

減点とは例えば、ボロボロのハンカチ、バサバサの髪、はげかけのネイル、つけすぎの香水など。

理想のワードローブには4つの要素

では、どんな服を揃えるかの提案は以下の通り。

1、靴にいちばんお金と愛をかけている

その日のコーディネートを考えるときは、1日の活動を考え、「歩く距離が長い」とか「靴を脱ぐことがある」とか「寒いからブーツ」とか、靴からまず決めるべきと指摘。大人は靴で無理すると体全体が辛くなるとのこと。納得です。

また上質な靴はおしゃれ度を上げるため、投資効果もいいといいます。

ちなみに、ハイブランドのヒールの高い芸術的な靴は、パーティー会場で写真を撮るとき専用で撮影が終われば、フラットシューズに履き替えるそうです。一般人は見るだけでいいですね。

2、「今」使えるものだけが入っている

今の「行動範囲」「生活様式」「時代の気分」にあっているのが、心地よさとおしゃれに見えるを両立する服とのこと。キーワードは「今週2回以上着たい服」です。

3、内容に偏りがある

ジャクリーン・オナシスもオードリー・ヘップバーンもソフィア・コッポラもテイラー・スウィフトも、おしゃれと言われる人はみんなワンパターン。

ワンパターンこそが「スタイル」で、おしゃれになるということは自分のワンパターンを見つけること、なんだそう。

トレンチコートやボーダートップスのような「マストハブ」とされる定番も、似合わないならスルーしてOKとのこと。

こう考えると、おしゃれの敷居が一気に下がるような気がします。

4、自分の得意分野、好きなものを極めている

パンツが似合うならパンツを、ブルーが似合うならブルーを極める(そればっかり)でOK。それが「スタイル」になると、ワンパターンをさらに推奨。

お気に入りが見つからなければ、手ぶらで帰ってもいい

似合うものを見つからずに変えるのは、辛いもの。無駄な時間を過ごしたようなやるせなさにかられるものです。

しかし著者は、納得いかない服を買わずに帰ったことを、むしろ「勇者である」とたたえます。

また、無駄な服に小銭を使わずに浮いたお金で、大人の女性が持つべきものとして以下のアイテムを紹介しています。

  • 靴…足に故障を出さないためにも、上質な靴を履くべき
  • 皮の手袋…手が感想しにくくなるため、シワができにくくなる
  • ストール…夏は冷房避けになり通年使える
  • タイツや下着…自分の気分がアガるもの

いい年の女性としての自分ケアと美しい装いの両立ですね。

上質なこうしたアイテムを普段遣いして、「普通のとき」に素敵になりましょうと提案しています。

スタイルを磨くことは自分自身を研究すること

最後に、ほかにも、なるほどと納得したことをいくつかご紹介します。

  • おしゃれは、同窓会で5位入賞くらいを目標に
  • おしゃれがマイナスなるときもある。シーンにあわせて
  • 生き方によってお金をかけるところは変わる
  • 土日で違う相手と会うなら、無理に違う服を着るより、同じイケてるコーデを繰り返す
  • 苦手なものは省く
  • カラコン、まつげエクステ、ハイヒール、ファストファッションの魔法か効力を発揮するのは若いうち。大人は、魔法に頼ってた美しさを習慣でカバーする必要が出てくる
  • 若作りは今の自分を否定すること
  • スタイルのある人は、「自分の好きなこと」を分かっている人

確かに、大人になると服だけではなくあらゆることが「好き」だけでは選べなくなります。

やりたいことや好きなことを家族のため、仕事のためと後回しにしたり、ママ友に合わせて我慢することも多いでしょう。

それが続いたために、自分の「好き」がなにかすら分からなくなる…ということが大人の女性にはありがちです。

私が服選びに迷うのも「好き」が分からないから…なのだと再認識しました。

自分自身を研究し、好きで似合って着心地のよい良質な服を持ちたいものだと感じる1冊でした。

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