昨年の秋から、我が家に眠っていた着物を整理しました。大量の着物を分別し整理しなおすのは、大変でしたが、新たな楽しみを和が家にもたらしてくれました。
【幼い頃、祭りの日に晴れ着を着せてもらった私(中央)と姉、着物姿の祖母】
着物を整理するまえの状況
2012年に他界した祖母のタンスは、しまい込まれたままでした。
中に何がはいっているのか、誰にも分かりません。
また、母の嫁入りダンスも決まった引き出ししか開けられたことがありませんでした。
母は長らく着物を着ておらず、私が結婚式参列などのためにときどき借りる数枚の着物以外は、なにがしまわれているのか、母さえ思い出せなくなっていました。
私自身は、子供のころは着物を着せられましたが、10代・20代は無駄に高価な衣類としか思えず、日本の文化を見直すようになった30代は子育てなどで着物どころではありません。
着物への興味を行動へと移したのは、44歳になった昨年秋のことでした。
着物の整理を思い立った理由
運気が下がりそう
なぜ死蔵着物を整理しようと考えたかというと、大きな理由が「運気を上げたい」と思ったからです。しまい込んだものって、周りの空気も淀んでいるような気がします。縁起が悪そう。
「運気を上げたい」と考えたとき、思いついたのが「死蔵品を捨てるか、活かすかしよう」ということでした。
自ら提唱する「すでにもっているものの魅力に気づき、活かす」を実践
私は、商品・サービスやメディアのプロデュースやブランディングをするとき、そのものがもとからもっているモノや歴史を活かすことを考えます。
その考えを我が家にも当てはめるとしたら、あの死蔵着物の魅力を発見し、活かし、楽しむべきではないかとかんがえました。
祖母たちの思いを無にしたくない
眠っている着物は、和裁もできた父方の祖母が自ら縫ったり、母方の祖母が母へともたせたものなどです。私にと、用意されたものもありました。
そうした思いを無駄にするのは申し訳なく、いかにも運が下がりそうな気がします。
後にやるほうがにもっとつらくなるい
7年前になくなった祖母の遺品の整理もついていないなか、私は44歳、両親は70代なかばとなりました。
年齢を重ねるほど、ものと向き合う気力やものを動かす体力がなくなると、よく聞きます。
母が自分の着物を覚えている今のうちに私の代で片付けを済ませ、娘たちの代に持ち越したくないと考えました。
着物が分からない我が世代
私の母の世代は、若い頃、普段着として着物をあたりまえのこととして、着用していました。
一方、私たちに、着物を着るのは七五三と成人式、結婚式くらいのもの。結婚するときに「嫁ぐと必要だ」といって作った着物に手をほとんど通していない人も少なくない。
私のような50~40代は、着物がイベント着となった最初の世代ではないでしょうか。
そんな私たちに、祖母や母たちの着物が「歳を取って着なくなった」とか遺品としてやってきます。これは、困りますよね……。
同じような悩みを抱える人の参考になればと、私のとった方法をご紹介します。
着物の整理が終わるまで
10月14日 明らかに使わないものを処分
タンスの中から、明らかに使わないものを処分しました。例えば、古くなった足袋や衣類、下着、布、タオル類などです。
祖母はなんでも貯めておく人だったので、これだけでもかなりの量となりました。
11月17日 すべての着物をタンスから出す
タンスの中からすべての着物、帯、小物類を出し、客間に並べました。
相手の総量がやっと見えてきました。
ひとつのたとう紙に数枚の着物が入っているものもあり、総枚数はまだ未知数です。
11月22日 分かる人に教わり、メモを付ける
この頃、整理した着物を自分で着ることを考え、着付けを習い始めました。
先生に、うちの着物を見て、種類など見ていただきたいとお願いしたところご快諾。
通常は教室に持参して見てもらうのですが、あまりにも数が多いため、我が家にお越しくださいました。古い着物も多そうだということで、先生の先生もご一緒にきてくださいました。
たとう紙を先生の前に持ってきては広げ、見ていただきます。
大先生はさすがのご経験。「これは上田紬」「これはウール」「これは法事に」など、さっささっさと仕分けされます。それを先生が、メモをとってくださいました。
実はこのメモ用紙は私の手製です。
おっしゃることをメモするため付箋を…とのことでしたが、書くのがとても追いつかないだろうということで、Wordで以下のような項目をプリントアウトしておきました。
着物
- 礼装(黒留袖 色留袖 振り袖 喪服)
- 準礼装(訪問着 色無地 一つ紋の江戸小紋 一つ紋の付け下げ)
- 略礼装(江戸小紋 小紋 付け下げ)
- カジュアル(御召 紬 木綿 ウール)
- 襦袢
- 羽織
- 道行き(コート)
- よそいき浴衣・浴衣
- 袷(あわせ・10~5月) 単衣(ひとえ・6~9月) 薄物(うすもの・7~8月)
- オススメの組み合わせ( )
帯
- 袋帯・名古屋帯・袋名古屋帯・半幅帯
- 織り・染め
- フォーマル(錦織 唐織 綴織)・カジュアル(博多織 紬)
- オススメの組み合わせ( )
このメモの該当欄にはマルを付け、そのほかの事柄はメモ書きしていただきました。
私は、着物とメモをせっせと運ぶ係です。
見ていくと、ほとんどはカジュアルなもの。いいものは形見分けなどで、持っていかれたのでしょう。
とはいえ、中には、大正期の未婚者用訪問着(祖母が嫁入りで着たのでしょうか)や、明治のものと思われるボロボロの喪服、今は日本で製造サれていない布地、「どこで着るの??」という派手な洒落着など、興味深いものもありました。
丈が短いのですが、おはしょりを作らない「対丈」という着方で着れば、問題ないとのこと。
おはしょりって、必ず作らないといけないわけではないのですね! それなら私より小柄だった祖母の着物でも、着られるものが多そうです。
しかし、やはり、管理が悪くて着られないものも多くありました。例えば、金糸銀糸がはげたもの。
シミやカビのひどいもの。
黄ばみのひどいものなどです。
こうしたもの11枚は、先生のご判断に従い、処分することにしました。
これだけの量を見るのにどれほどかかるかと案じましたが2時間ほどで、全ての着物と帯の仕分けが完了しました。
それにしても、先生方の知識の広さ・深さには感服いたしました。
まずトライする着物が決定
仕分けの際、「これは、今度の正月に娘と着たらいい」と勧められた着物があります。
それがこの2枚です。
どちらも母のものです。なんとどちらも未着用。もったいないなあ。
右は、大島紬のアンサンブル。
左は、黄八丈のアンサンブルです。
「このアンサンブルを着て正月に出かける」が、私と娘の新たな目標になりました。
12月24日 種類ごとに分ける
それぞれの着物の種類が判明したので、次は種類ごとに分けます。
黄ばんでしまったたとう紙は、防虫効果が失われているそうで、新しいもので包み直すことにしました。
たとう紙に包み、メモをステープラーで留めたら、種類ごとに重ねていきます。
一気にはできないので、仕事の合間の気分転換に、少しずつ進めていきました。
12月27日 仕分け完了!
着物と帯を種類ごとにまとめるのが終わったら、次は小物類です。
こちらは帯揚げと帯締め。
くちゃくちゃだったのをキレイに結び直しました。
かわいいマフラーも登場。
さあ、いよいよ、仕分け完了!
点数を数えてみた
ここで、果たしてどれほどの着物があったのか、点数を数えてみました。
着物
- 礼装(黒留袖2枚 振り袖1枚 喪服10枚) 13枚
- 準礼装(訪問着3枚)3枚
- 略礼装(小紋4枚 小紋アンサンブル1組)6枚
- カジュアル(御召1枚 紬3枚 紬アンサンブル1組 ウール10枚 サマーウール3枚 おしゃれ着2枚)21枚
- 寝間着5枚
- 襦袢 3枚
- 羽織 13枚
- 道行き(コート)5枚
- 浴衣 9枚
処分11枚
男性もの 8枚
帯その他
丸帯1本 袋帯4本 名古屋帯8本 半幅帯8本(処分4本)
帯揚げ 5本
帯締め 12本(処分2本)
というわけで死蔵着物の総点数は……
- 着物97枚
- 帯 25本
- 帯揚げ 5本
- 帯締め 14本
計141点
そのうち、タンスにしまって活かすものは……
- 着物 78枚
- 帯 21本
- 帯揚げ 5本
- 帯締め 12本
計116点
となりました。
タンスにしまい直し
では、ついに、活かすほうの111点をタンスに入れなおしました。
着物をしまうには、やはりちゃんとしたタンスが良かろうということで、しまい込まれていた母の花嫁タンスも再び日の目を見ることになりました。
花嫁タンスは重く、引き出しが動きにくいということで、現在の母はアイリスオーヤマの引き出しを愛用しているのです。
着物を運んで、種類ごとにしまいました。
小物もこのとおり!
このほか、草履やバッグ、扇子や羽織紐なども納め、片付けは終了。
ここ数ヶ月、着物で溢れていた客間がようやくスッキリしました。
私の場合は枚数が多くかつ、タンスがあり、しまう場所があったので、100点近くを保管・活用することにしましたが、持てる量が少なければその量に従って厳選すると良いかとおもいます。
1月6日 着て楽しむ
そして、正月。天候がよくなった6日。中3次女と一緒に、宿題になっていたアンサンブルを着てみました。
当初は、娘が黄八丈を着る予定でしたが、サイズが小さくて急遽交換。
これで、金沢散歩に出かけ、日本の風情を楽しんできました。
これからも、せっかく祖母たちが残してくれたカジュアルな着物をどんどん楽しんでいきたいと考えています。
受け継いだ着物に困っている方は、まず専門家に相談し、できることならいっそ楽しんでみてはいかがでしょうか。
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