多様な価値観が当たり前の時代の生きづらさと人付き合いについて考える『「言い返す」技術』(五百田達成著)『「とにかく優位に立ちたい人」を軽くかわすコツ』(石原加受子著)【読書レビュー】

目次

多様な価値観が当たり前

価値観の多様化が進む現代。いろいろバックグラウンドや考え方、ものの見方の人が同じ地域や団体などにいることが一般的になっています。

「価値観が違う」は、よくないことのように言われがちです。果たしてそうでしょうか。

さまざまな価値観の人がその価値観を伝えあい知り合うことは、視野を広げたり、同じ価値観の人だけでは気づかない課題が見つかったりとメリットがたくさんあります。

私自身、価値観の異なる人とお話をして、新たな知見やものの見方を知ることが大好きです。

海外の旅が好きなのも、異なる価値観に触れに行く…というのが大きな目的の一つですから。

話し合いができないことやマウンティングが生きづらさを生む

「多様性が組織を強くして競争力を高める」もよく言われます。

しかし、日本の組織では、多様性を尊重するムードをなかなか感じません。それはなぜか?

おそらくは「自分の方が偉いから、自分の価値観だけを尊重せよ」とマウントをとったり、他人を自分の価値観に合わせて思うように動かそうという人や、話し合いや議論やすり合わせができない人が決定権をもつ立場に多いためではないでしょうか。

例えば、いろんな場でマイノリティになりがちな女性や若者、フリーランス・自営業、離婚経験者、障がい者、病気療養中、貧困、非正規雇用、ひきこもりなどは、価値観やものの見方が多数派と合わないことがよくあることでしょう。

で、マウント取り発言や自分の意見を優先せよという支配的な発言から、こちらはムカっと来たり、傷ついたり。心を乱され、平静でいることが難しくなりがちです。

話し合いや議論ができない、価値観を伝えあって多様性を認め合うことができないというのは、とても辛いことです。それがマイノリティにとって、いわゆる「生きづらさ」につながります。

マイノリティ以外でも、退職の理由の多くが「人間関係が悪い」であったり、離婚の理由が「性格(価値観)が合わない」であることからも、関係性の悪さや価値観の尊重しあいができないことが、いかに不快でキツイかが分かります。

価値観の合わない、かつ攻撃的・支配的な人とのチクチクネチネチした関わりは、限度を超えて続くと、自死やメンタル疾患になど重大な事態にもつながりかねません。

また、大切な人生を不快だ、生きづらいと嘆くことに使うのは時間の無駄ですよね。

こうしたことから、話し合いのできない人やマウンティングをするような人からの攻撃に対する防御法は、誰もが身に付けておきたいものだと感じていました。

自分の心を守るため「言い返す」か「かわす」か

ここで、最近読んだ2冊の本をご紹介します。

こちらは「ムカつく相手にスパッと言い返す」の副題の通り、「攻撃的でうるさい人」「自己チューでわがままな人」「緩慢でえらそうな人」「しつこくてめんどくさい人」などの「ムカつく相手」に「急所をついたひと言で言い返す」ことを勧めています。

「あっちに『すいません』と反省させ、こっちもスカッと気持ちが晴れる」技術といいます。

こうした「ムカつく相手」がなぜムカつく態度をとるのか、その心理を分析することで、やりがちなNG対応と効果的なOK対応を指南する内容です。

この分析に「分かる、分かる」と共感し、OK対応にスカっとする人は多そうです。※実際、とっさに言えるかは難しい気もしますが。

一方、さらに本質的な対処を考えさせられたのはこちら。

あれこれ言われるのは相手との「関係性の問題」ととらえ、「優位に立ちたい人と争って勝ったとしても、自分は傷つく」という考えから「相手とどう付き合い、自分を傷つけないためにどうするか」という視点で「争わないで、自分を守るスキル」として「軽くかわす」を推奨しています。

こちらも相手を4パターンに分けて分析します。

  • 人間関係の勝ち負けにこだわる「脳幹タイプ」
  • ”優しさの押し売り”で優位に立つ「感情脳タイプ」
  • ”否定”で相手を支配する「左脳タイプ」
  • 要求しながら相手を支配する「右脳タイプ」

この分類はよくできています。とくに、されている本人も気づきにくい「優しさの押し売り」タイプや罪悪感を植え付けるタイプの攻撃・支配の仕方もよく解説されていました。

また、「優位に立ちたい人」自身が劣等感が強く、他人からそのことを指摘されることを恐れているため、先に攻撃を仕掛けていると指摘。

「自分が傷ついているから、周りも傷つけよう」というマインドだといいます。

「自分を大事にすること」に焦点を合わせる

ということは、「優位に立ちたい人」の攻撃は、まずその人自身の内側に原因があり、私たち何を反論しても、態度を改めても、やめさせられないということです。

つまり、私たちができることは、自分がその影響をうけて、ムカついたり、傷付いたりしないための心の防御と、そもそもそういう人に関わらないことだけ、ということですね。

また、私たちムカついたり、傷ついたりする側にある原因として、自分以外の人に気を使い、その人の感情に合わせて行動を変えるなど「他者中心」で生きているからだと著者は指摘します。

「他者中心」の姿勢とは、相手に何か言われたり、されたりしたとき、「嫌だな」と思いながらしぶしぶ言うことをきいたり愛想笑をしたり、秘かに傷ついたりしたりしているような状態です。

……けっこうありがちな気がします。※愚痴や悪口を言ってるときは、たいていこんな感じですよね。

反対に「自分中心」の態度は、嫌だなと思ったときに「嫌です」と言うとか、「今やっていることが終わるまで待てるならできますけど」と条件を提示するなど、自分と自分の感情を尊重した対応をすること。

「自分中心」であれば、相手に振り回されたり、傷ついたりすることは、防げるということです。

と書くのは簡単ですが「自分中心」の考え方やふるまいは、自分の好みや感情を優先するよう日々心掛けて身に付けてこないと、なかなかできないのではないかと思いました。

特に「主婦」や「母」など家族のケアをする人や接客・コンサルなど人にサービスする仕事の人、会社でサポート業務に従事する人、HPSを自認する人、「自分矢印」などと自分の責任を考える人などは、自分を後回しにして相手を尊重することが多く、「他者中心」になりがちだと気づきました。私も含めてですよ(そうか、だからカチンと気やすいのか!と妙な納得)。

そんなやわな私たちが、長年マウンティング名人として生きてきた「優位に立ちたい人」と同じ土俵で戦おうとしても勝ち目はなく傷つくだけ。

だから、はじめから戦わないのが、自分を大切にする態度だということなんですね……ということが、腑に落ちました。

「距離を置く」が一番の対応

「嫌なことを言ってくる人がいる」と誰かに相談すると、多くの人は「離れてしまえ」とアドバイスします。

しかし、嫌な相手は、会社の上司や同僚、血縁者、近所の住人など、「離れたくても(すぐに)離れられない」という関係性であることも多いものです。

『とにかく~』では、最終章で「争わずに”距離”をおく」と勧めていますが、これは物理的に離れることだけではなく、心理的な距離についても言っています。

向こうが要望したり、あれこれ指示をしてきたとしても、それを受け入れるかどうかはこちらが決めるという姿勢で、距離をを置くことで心を守ることができる。

うまくいけば、きっぱりはっきりとした態度をとることで、相手との関係性を変えることもできるかもしれません。

また、『言い返す~』の「スカッと」な言い方も、すぐに離れられないなら、せめて溜飲が下がる対応で、自分が傷つかないように……ということなのでしょう。

言い返すときにも「他者中心」の心持ちではイライラしそうなので、「自分中心」のマインドにメンタルに整えておくと、より効果的かと思いました。

もちろん、ムカつく相手や優位に立とうとする人の言動がひどすぎるなら、「自分の態度や考え方で自分を守る」と頑張るより、物理的にも離れ、関わらないのがベストです。

その「優位に立ちたい人」や「攻撃してくる人」の言うことをきいても、気を使っても、態度を変えても、私たちは大事にしてもらえないでしょうから(また別のネタで攻められる)。

まず何より自分が自分自身に優しくなって、自分に「そんな人の相手」という無理な我慢をさせないようにしてあげましょう。

私たちを優しく大切に扱い、尊重してくれる人は、ほかにたくさんいますからね。

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